線香花火
「そういえば名前……」

話が弾んで、自己紹介をしていないことに、今さら気がついた。

「能勢夏人です。よろしく」

「よろしくお願いします。あ……えっと……せみ……」

突然、自己紹介をしたせいか、女の子は戸惑いをみせていた。慌てて名前を言おうとしたのか、噛んでいる。

「せみ?」

「勢いの‘‘勢’’に、見るの‘‘見’’で、せみ……勢見夏子です」

勢見夏子……まさに夏にふさわしい名前やな。水着姿を見てみたい……。

あっ!! 今、ヘンな妄想が膨らみかけた!

「ヘン……ですか!?」

「あっ! いやっ……別に……」

思わず緩む頬をさする。名前は、ヘンやない。ヘンなのは自分やから!

「私はこっちなので……また、明日」

夏子ちゃんは、微笑んで手を振った。そして、人の波に漂うようにしていつの間にか姿が見えなくなった。

夏子ちゃん……かぁ。いくつなんやろ? 小柄で若くみえるけれど、結構年上やったりして!? また明日、会えるのが楽しみやな。



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