線香花火
彼女は飲食店には目もくれず、どんどん先に。まわりはカップルばっかりやし!

「あっ、あの……どこに行くんかな?」

「めっちゃいいところ」

「えっ……でも、この辺りって……」

奥手な自分は、足を踏み入れたことのないエリアだ。

「あっ! ほら、あそこ」

彼女が指差すところは……ラブなホテルやないですか……!?

……と、思ったら、その角を曲がると、小さな神社があった。

「こっちこっち」

夏子ちゃんの手招きで神社の奥に案内された。

「空を見て」

小さな星たちがキラキラと光を放っていた。ここはさっきまで自分がいた場所とは別世界のようにさえ思えた。

言葉も出ず、口をぽかんと開けたまま、ぼんやりと星を眺めていた。

「ここは秘密の場所……ふたりだけの秘密の……」

月明かりの下、ふたりはみつめあった。

そして、どちらかともなく、唇を寄せていた。

甘い甘いくちづけ……奥手な自分が夢にまで見たファーストキスやった……。

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