死に至る病
 廊下に出て、少し行くと、君島くんがいた。


 田中の奴もいるけど、それはいいや。


「姫野さん?」


 声をかけてくれたのが田中じゃなくて君島くんだったら、もっと素敵だったのに。


「なに? 今、忙しいんだけど。」


 あ、違う。


 君島くんもいるんだ。話すチャンスなのに。


 私は、早口でまくし立てた。


「まぁ、話くらいは聞いてあげても良いよ。何?」


 ふん。


「これ、使って。」


 田中の奴がハンカチを出してきた。


 白い、飾り気のない奴。


「は?」


 私は意味が分からなくてそう言っていた。


「姫野、どうした? 大丈夫か?」


 君島くんが声をかけてくれる。


 でも、何が?


 2人の視線が私の顔を向いていて、私は思わず手を顔へ。


「あ、涙。」


 私は急に恥ずかしくなると、振り返り、廊下をもど……ろうとしたら、君島くんに呼び止められた。


「姫野?」


「見ないで。」


 私は多分、アイラインが溶けて流れてるであろう、目を隠した。


 なんで、涙なんか。


 みっともない。
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