嫌われている君がスキ
私は、嘘をつくのが下手である。
だけど…それがたまにキズ。
でもこの場合、本物にうざくないって思ってるんだからしょうがない。
むしろスキなんだ。
目の前の女子2人が明らかに気まずそうに口をつぐむ。
でも
「だけど…たまにやり過ぎって思うこととかない?アイツすぐ暴力振るうしさ。」
まだ私を丸めこもうとする。
そう、言われましても。
私はその言葉を否定しようと口を開こうとした。
「斎藤ー!タオル持ってきてー!」
ら、誰かに呼ばれた。
この声は瑞希ちゃんだ。
コートの方を向くと、暗い茶髪でショートカットの瑞希ちゃんが私に手招きしてた。
私は、自分の隣に畳んであった水色のタオルを持ってその場を離れる。
タオルを持っていくと、そこら辺の男の子より雰囲気イケメンな瑞希ちゃんが
「さんきゅー」
と言って笑う。
「また峯のこと見てたの?」
汗を吹きながら言う瑞希ちゃん。
心なしか目が呆れてるように見える。
「もちろん…と、言いたい所だけどさ、ちょっと女の子達と話してた。」
「なんの話?」
「峯君の悪口。」
「あー、なるほどね。」
瑞希ちゃんは、私の峰君に対する気持ちを知ってる唯一の人。
私はまたコート上の峰君に目を向ける。
コートの端に立つオレンジのゼッケン。
あぁ…やっぱりまだ1人。
「……うん、やっぱり峯を好きになる意味が分かんないわ。」
納得したように言う瑞希ちゃん。
瑞希ちゃんは、こんな感じでバッサリものを言う。
だから、他の女子から1歩距離を置かれてる。
「そうかなぁ。こう惹きつけられない?」
「ない。多分それ斎藤限定の現象。」
「そっか…って現象?」
可笑しくてつい笑いが漏れる。
瑞希ちゃんと居ると楽だ。
さっぱりしてて楽しい。
さっきの子達も正直に言えばいいのに。
私達も悪口言ってるんだから
貴方も一緒に言ってよ
そしたら自分の罪悪感が減るの
自分が間違えてないって思えるの
だから言ってよ
同じ所まで落ちて…?
まぁ、私はそんな事言われても言わないけどね。