オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww
「煩悶してても事は始まりません。それどころか、貴女は終わっている人間なんですから、ここで立ち止まってはいけません」


「えっと、それは、どういう意味で」

「褒め言葉です」

「……そうですか」

中々、不思議な人である。

確かに、乙女ゲームに人生費やして女を捨ててる現状は終わってるけれど、褒めてるようには取れない。


まあ、良く受け取ると、ここで悩んで変に接するよりはいつも通りに話した方が親密になれるってことだろう。


と、良く解釈しておこう。


「知ってるんですか……その、昨日のこと」

私が告白したことを。

すると、執事さんは氷の表情のまま微笑んだ。


「私に知り得ぬことはございません。お坊ちゃまに関することは全て把握しております」


あ、怖い。

この人を敵に回したら危ない気がすると、私の動物の勘が告げている。


「冗談です。お坊っちゃまから伺いました」

「……あ、そうですか」

冗談には聞き取れない間で、挟んでくるものだから、拍子抜けしてしまう。

冗談言う時くらいは笑ったり、おどけてくれないと……って、執事さんには難しそうだ。


かといって、離れすぎず近すぎず、私との距離を絶妙に保つところからは、優しさを感じるんだけどな。


「おはよー……ございます」

居間に入ると、昨日と同じ場所にお母さんと宮崎さんが座っている。

……しかし、


「いない」

ケントがいないのだ。

「お坊っちゃまは自室でお食事します」

「そう、ですか」

告白したっきり顔を合わせてないから、少し安堵した。

これで動揺してお母さんにバレる心配がなくなった。


あれ。もしかして。

来なかったのって、気まずかったから?

それとも、オタクのクセに恋するなんて気持ち悪いって思ったのか?


いやいや、そんなことはない。

これもまた行き過ぎた妄想に違いないから。


だって、良い返事だって貰ったし…………いや、よくよく思い返せばケントは笑ってただけで『俺もだ』みたいな返しはしてくれてない。


あの笑いは嘲笑だったのかもしれないし……ああ。どうしよう。


恋愛経験ゼロ、かつ友達の少ない私には対応も分からなかった。


美味しいはずの執事さんのご飯は美味しいはずなのに、味がしなかった。
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