オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww
どうやって帰ったか記憶にない。

そのまま普通に授業を受けたのか、それさえも分からぬまま、気がつけばベッドの上にいた。


貧乏人の私には馴れない高級素材のベッドに体を埋めていても、寝たくても寝れない。

面倒な事件に直面しているのに、寝れないなんて不便な体だ。


この部屋に誰かが住んでいた形跡があるからか。

整えられてはいるが全体的に大分昔に使われていたような、使用感があるのだ。

……いやいや、変に考えて突っ込みたくない。


これ以上ドツボにハマって傷付くのはごめんなんだ。


こんな時は……と、常に私を癒してきてくれた乙女ゲームを取ろうとした手がすべって床に落としてしまった。

動きたくないが、現実逃避のためにも重い腰を上げてベッドの下を覗いた。


「……ん?」


ゲームはあったけど、その向こうに何か光っている。

銀色の、……小さな宝箱みたいだ。

使用感があるとは思ったけど、前にここに住んでいた人が隠したりでもしたのだろうか。

「って、何取ろうとしてるんだ。突っ込まないって言ったばかりだろ」

ケントの家なんだから、どうせケントに繋がる物だろう。


それを見つけるなんて自滅以外の他にない。


首を振って頭から排除したフリをして、ゲーム機を起動させた。


「っあ」


トップ画面に次々と出てくる王子達。

最後に出てきた彼を見ると、自然と手を離していた。


私、ユウヒ様の顔を見れなくなっている。


ユウヒ様の顔を見たら、ケントのことを思い出してしまう。

嫌だ。現実から逃げ出したいのに、どうして消えてくれないの。


お願いだから、やめて。


震える手でゲームを終了させると、枕元に置いた。


ゲームも出来ない。

寝れもしない、となると布団の上で目を閉じることしか出来なかった。


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