オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww
この男は夢の中でもハイスペックなのか。

魔法じみた行為も簡単にこなしてしまうなんて。


『別に良いでしょ』

視界から隠すように、人形を背中に回した。


『お前って、面白いな』

くくくっと、口元を隠してケントは笑った。


先程の少年も言ってたが、何が面白いのか分からない。

きっとリア充王子から見れば庶民のオタクが、自身の言動で一喜一憂するのは面白いのだろう。


夢の中でまでバカにされるなんて、私はとことん悲しい人間だ。

自分の理想通りの世界を造り出すのだって簡単なのに、それをしない。


目が覚めた時の、現実と夢のギャップに苦しくなるからだろう。


『アンタこそ。私なんかに構うなんて、面白い人間だ』

『俺はつまらない人間だ』

『……ふうん』


いつもはあんな気が強いケントと私の夢に来れば弱気になるのか。

なら、私の夢の中にずっといれば良いのに。


『お前と違ってな』

『アンタが弱気なんて、気持ち悪い』

『……だな』

ケントは自嘲気味に笑うと、頭を掻いた。

その自信なさげな態度は、鈴木くんそっくりだ。


『あー……もう時間か』

『は?』

ケントは天井を仰ぐと、私を見据えた。

その輪郭は徐々にボヤけて、ぐにゃぐにゃになっている。


『ちょっと待って、消えるの?唐突過ぎる。時間なんて気にしなくても良いでしょ』

『この続きは後でだな』

何故、焦って引き留めようとするのか。

夢なのだから会おうと思えば会えるというのに。

いや、夢だからこそ本音を言えたのだろうか。


『お願いだから、置いてかないで』


少年も、ケントも、鈴木くんも、お父さんも。

皆、私を置いて消えてってしまうんだ。


込み上げてきた熱い感情は行き場をなくして、目から液体になって溢れだした。


でも。


『またな』


消えていった。


白い世界に、透明な波紋が広がっては小さくなって、無くなった。
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