オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww


「っあ」


額から大粒の汗が落ちている。


「夢、か。……だよね」

ワイシャツが汗で張り付いて気持ち悪い。

開けっぱなしのカーテンから見える窓は、明るい。


あのまま寝てしまったのか。


いつ寝たのか分からない程の事態に直面したのは、ケントが夢だと思い込んだ時振りか。

いっそのこと全てが夢で、目を開けたらユウヒ様グッズで溢れかえった私の部屋だった。
なんてこと、……ないか。


起き上がろうと思ったが諦める。


別に良い。

学校なんて休んでしまおう。


目を閉じれば、素敵な夢の中に飛んでいける……と思うが中々寝れない。

面倒だけど……風呂に入って汗を落とせば、死んだように寝れるだろうか。


「あ」

ガチャリ、扉を開けた姿勢のまま固まってしまった。

だって、目の前にケントが立っているから。


今、一番に会いたくない人間に会うとは、運が悪すぎる……。


「お風呂、借りる」

「……あっそ」

その場を去るようにそそくさと風呂場へと向かうのだが、ケントの足音も近付いてる気がして振り向いた。

ケントと風呂場へと行こうとしているのだろうか。

暑い季節ではないのに、汗をかいている。


これが一つしか風呂のない普通の家なら大問題だが、ケントの家は風呂が二つある。

必要ないだろうと思っていたが、まさか活用できるとは。


「風呂に入るのか」


変に緊張感のある空気を打ち消すように、問いかけでもなくケントは呟いた。

私に伝える気がないみたいだ。


「……」

返事なんてしない。

必要ないからじゃなくて、出来なかった。


歩行速度を上げる。
早くこの二人っきりの環境から抜け出したかったから。

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