オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww
完成すると、鈴木くんは伺うようにこちらを見た。


「すっ、……ご」

黒髪の少女が、花を持って微笑んでいる絵。

男の人が描いたと思えない位柔らかいタッチで、儚いイメージだ。


製作途中を見ても、どうやってるのか分からない位素早いスピードで、ただただ驚くばかりだ。


「星野さんです」

「えっ、この子がですか?」

「す、すいません。下手くそで、星野さんなんかに見えないですよね……線も雑で適当で。星野さんと言うなんておこがましい」

「そっ、そんなことないです」

焦って紙を握りしめようとする鈴木くんから、奪って紙を見た。

私だって言うのがおこがましい程、少女は美しく笑ってる。

「嬉しいです」


この子のつぶらな瞳も、優しそうな微笑みも、取り巻く暖かさも何も持っていないのに。

私をこう見てくれたのが嬉しかった。


「……ありがとう、ございます」

「貰っても良いですか?」

「えっと、そんなモノで良かったら……どうぞ」

鈴木くんは頭を掻くと、苦笑した。


折れないように持ち帰らないと、と丁寧にクリアファイルに入れた。


「……鈴木くんが、この部活に入っているの、知りませんでした」

鈴木くんは鉛筆を筆箱にしまいながら答える。

「言う機会がありませんでしたからね」

「……ですね」



「おお!!仲良くなってる!!」

勢いよく扉を開けて現れたのは、アリスだ。


「あ、丁度作業を見せてもらったところで……って」


振り返って、息を飲んだ。

そこにいたのは、“花咲く、プリンス物語”の主人公の麻衣ちゃんの格好をしたアリス。


下町の娘の主人公は、ボロボロのスカーフを首に巻いて、赤髪をサイドで結わえている。

そして、手には王都に触れるキッカケとなった、祖母の作ったマフィンが入っている。


「んにゃあああ!!!!うめ、可愛いよ!!!」

「うめじゃないってば。アリスでしょ?」

思わず抱きついたアリスにデコぴんをくらった。

「あうっ」

「でもって、私の隣にいるのは誰でしょう?」

「?」


視線をアリスの後ろに移した。
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