オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww
「はい?」と、鈴木くんを見上げた。

いつもどちらかが数歩後ろを歩くから、真横から顔を見るのは初めてで、少し照れくさい。


「僕、嬉しいですから」

補語もなく発された言葉を頭で数反するが、何に対してなのかは分からない。

「どれに対してですか?」

「あっ、星野さんが、部活に入ってくれたことです。結構部活内の雰囲気変わったんですよ」


私が入って嬉しい。

ド真面目な鈴木くんなら冗談じゃなくて、心から思って言ってくれたのだろうと、考えると私まで嬉しくなる。


「私の方こそ、嬉しいです。いっぱい絵を書けますし、アリスのコスプレを生で見放題ですし」

「そのうち見慣れたら、飽きますよ」

「鈴木くんはずっと、アリスのコスプレを見てきたんですもんね。……良いですね」

「良いですかね」

鈴木くんは苦笑しながら、首を傾げた。


やっぱり、アリスの話題になると鈴木くんはどもらずに話してくれる。

さすがアリス。

コミュ障の心に入り込むのが上手い。


「私はイベントの時しかコスプレを見れないですからね。一年生の時から見れてた鈴木くんが羨ましいです」

「いえ、去年からじゃないですよ。中学同じでしたし、何かと話す機会があったので……」

ちょっと待て。

アリスと鈴木くんの中学が同じ、ということは、私と鈴木くんも同じ中学だったの?


……っと、今思い出してみても、中学はアリスと以外は会話してなかったから全く分からない。

ま、まあっ、鈴木くんも私みたいな空気を覚えていない、はずだから大丈夫。


「アリスと同じクラスになったり、とかですか?」

この話題は避けようと思いつつも、会話の種はアリスにしかなかった。

もしかしたら、中学一年生の時はアリスとクラスが違ったから、その時に鈴木くんと仲良くなったのなら私が知らなくて当然だ。

同じクラスの人も分からない私が、ましてや他クラスなんて知ってるはずもないし。


しかし、鈴木くんは悲しそうに笑うと、地面を見た。

「一応、星野さんと三年間同じクラスでしたよ」


大失敗。

墓穴を掘ってしまった。


「すっ、すいません……」

「良いんですよ。僕は空気でしたし、いなくても分からないネクラ野郎でしたから……って今もですね」


いつもはえっとえっと星人なのに、すらすらと自虐的な言葉を吐いては、声のトーンを落としていく。

鈴木くんのことをほとんど知らない私でも、落ち込んでいるのは分かる。


私が入部して嬉しいって言ってくれたのに、私は鈴木くんを傷つけてしまった。
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