オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww
ごめんなさい、傷つけて。

ありがとう、悲しんでくれて。

伝えたいけど、伝えるすべが分からない。伝えて良いかも分からない。分からないだらけだけど、言わないとダメなのは分かる。


そう、言わないと。


鈴木くんの前に立ちふさがって、仁王立ちした。


「ご、ごめんなさい!!空気なのは私の方です!!中学では輪に入れなくて、アリス以外覚えてないんです!!だから、鈴木くんのせいじゃありません!!」

高ぶった感情は大声へと変換されて、暗い道路にこだました。

上手く謝るつもりだったのに、これだったら伝わらない。

ああ、こんな時にコミュ力がないことを後悔するんだ。


もっと沢山話して、謝り方を学んでおけば良かったって。


いたたまれなくなって、この場から逃げ出したかったけど踏み留まって、必死に目を食い縛る。

逃げたら嫌われてしまう。

鈴木くんにだけは嫌われたくない。……だから。


重いまぶたを押し上げて、鈴木くんの表情を直視した。


「え」

「……ぶふっ」

すると、両手で顔を押さえて、必死に笑いを堪える鈴木くんが視界に入ったのだった。

「あれ、笑えるような事ありました?」

まさか謝罪で笑うはずもないし、何かしらの伝達ミスなのだろうか。

もしかして、鈴木くんには私の言葉がナイスなジョークに聞こえたとか。


ない、ない。


「だって、可笑しいじゃないですか」

鈴木くんは、手を外して顔を見せた。

苦しそうだけど心底楽しそうな笑顔で、私までつられて笑顔になってしまいそう。


目尻には涙が貯まっていて、笑いの程度が伺える。


「星野さんが僕の事を覚えていない事くらい分かってますよ。孤高の存在でしたし、それで当たり前なんです。だから、真剣に謝らないでください」

えっと、つまりコレは何?


鈴木くんは私が覚えてない事を理解しているのに、それを謝る私が自棄に真剣だから笑ってたってこと?


悲しそうな顔を見せて、自虐的になったのに、それで良いのか?


……ああダメだ。真面目に物事を考えすぎると、眠くなってきてしまう。


「っぷ。あはははは!空気なのは僕ですよ……くっくっくっ」

まあ、でも。

鈴木くんが笑っているならよしとしよう。


「……真面目に言ったのに、笑いすぎです」

「だって、だって。くくくくく」

止まっていた足を再び動かして、鈴木くんの隣を歩く。

いつもは笑っている時は顔を反らされて分からないけど、横を歩いていたら見放題だ。


笑いのツボは謎だけど、鈴木くんを見てたら思わず笑みがこぼれた。


暗い夜道も、鈴木くんが笑うだけで明るくなっていく気がした。
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