オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww
「それじゃあ、また明日」

「はい。鈴木くん、気をつけてくださいね」

私の家の前で別れて、鈴木くんは夜道に吸い込まれていった。


今時は何かと物騒だし、鈴木くんに万が一の事がなければ良いんだけど。

これで何か起こったらどうしよう。

深夜に徘徊する変態おじさんとのご対面なら、鈴木くんはショックで寝込んでしまうかもしれない。

いやいや、切り裂きジャックみたいな通り魔よりかはずっとマシだ。


「お前、家の前で百面相して何が面白い」


「うえっ!!?」

聞き覚えのある声に振り向くと、ケントがドアを半開きにしながら覗いていた。


「……い、いつから見てたんだ。この変態おじさんが」

「変態でもおじさんでもないっつーの」

「あうっ」

ご丁寧にデコピンを頂戴したあげく、「ばーか」と貶された。


「とっとと入れよ。気持ち悪ぃ格好してねーでよ」

ケントは踵を返して、家の中に入っていった。

ヒリヒリ痛む額を撫でながら、ケントの背中を追いかけて家に帰った。


「たっだいまー」

いつもよりも陽気に挨拶してしまうのは、きっと鈴木くんのせいだ。

あんなにも笑顔で私を見るから、私まで嬉しくなった。

鈴木くんは魔法使いだ。


笑うだけで、アリスも部長さんも私も幸せにしてくれるんだから。


小躍りしそうな気分のまま、鞄を下ろして居間に出ればお母さんが不思議そうな顔で私を見た。


「何か危ない薬でもしたの?」

「してないから。ちょっとテンションが高いだけ」

「そう、それなら良いんだけど」

娘をジャンキー呼ばわりとは何事だ。


ぶうっとむくれながら、お母さんを見ればそれは楽しそうに笑っていた。
< 59 / 114 >

この作品をシェア

pagetop