オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww
落ちた涙を拾いもせず、頭を抱えた。

出てけ、出てけ。

私の頭を支配するんじゃない。


お願いだから。


「消えて」

「何で」

「アンタは、私の妄想だ。妄想の産物が話しかけるな」

「はぁ?」

くっくっく、と圧し殺した笑いが静かな部屋に響く。


「何?俺はお前の妄想な訳?知らなかったんだけど」

「うるさい。お願いだから、出てってよ」

「出てくのはお前の方じゃねーの?」

突如、私の暗かった世界は明るくなった。


無理矢理、腕を引かれて立ち上がらされた。

そして、その犯人と向き合う形で制止する。


「ケン、ト?」

「じゃねーなら、俺は何だよ」

私の腕を掴む手の温もりが、伝わってくる。

暖かいし、痛い。

夢じゃない。妄想じゃない。


「嘘。だって、ケントは私の妄想で、お兄ちゃんになって、一緒にいてくれただけで、本当はただの王子様なんでしょ?」


性格は見た目通りで優しくて。

私なんかとは関わらない人生を送るんだ。


「ほんっと、お前は意味分かんねーことを言うよな。まじ面白い」

ケントは悪意のない、子供みたいな無邪気な笑顔で私を見つめた。

私のぐちゃぐちゃになった頬を拭ったら手が濡れるのに、嫌がる素振りを見せない。


「えっ………………と。本当に、本当に、ケントなの?」

「最初からそうだっつーの」

「私のお母さんと宮崎さんが結婚して義理の兄妹になったってのも、現実?」

「当たり前だろ」

「えっと、昨日の夜に家にいなかったのは?」

「今日からお前が住むから片付けといた」


「えっと、えっと、じゃあ。今までの妄想だと思ってたこと自体が妄想なの?」

「そうなるんじゃねーの?」


うっ、わーーーーーー。

ってことは、これは全部、私の一人相撲な訳ですか。


「ほら、泣き顔しまえよ。今から向かうんだからな」

「ぶへっ」

ユウヒ様等身大抱き枕を顔に押し付けられ、ごしごし拭かれた。

「ちょ!汚くなったらどうするんだ!」

「お前の涙だから良いんじゃね」

そういう理屈じゃないんだよ。

「……というか、どこに向かうのさ」

「俺の家」

ケントは部屋の隅にあった段ボールを開くと、適当にユウヒ様グッズやゲームを入れ始めた。

そういやさっき、「お前が住む」とかなんとか言ってたような……。


「な、何してるんだ……」

「だから、これから一ヶ月俺の家に住むから、お前の荷物をまとめてるんだろ。突っ立ってるなよ」


ほら、と渡された段ボールを受け取って訳も分からず、教科書を入れた。

雑なように見えて、丁寧にゲームを入れてくれるケントの横顔を見ながら。



……って、本当にこれって現実?

整理したくても混乱した頭じゃマトモに考えてくれなくて、現実かどうかも怪しかった。
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