オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww
「いひゃい」

この頬の痛みは明らかに現実だと告げているのだけど、どうも信じられない。


ここまで来るまでに何回頬をつねったか。

家の前に止まっていた、胴体の長い黒光りしている車に乗った時に。

車の中に、お母さんに宮崎さんがいると気付いた時に。

到着した豪邸がケントの家だと紹介された時に。


……そして現在、私の部屋として使っていいと言われた部屋があまりにも広くてつねっている。


プリンスです私、とでも言いそうな少女が住んでそうな部屋だ。

シャンデリアにピンク色のベッドに、ソファーに、タンスに、あれやこれ。

私の部屋の三倍以上の広さなんですけど。


「あー、和風が良かったのか?」

ここがお前の部屋だと紹介した主、ケントは訝しげに私を見る。

気遣いありがたいが、私が止まってる理由はそれじゃない。


「いや、そうじゃなくて。……ここよりももう一回り位狭い部屋ってない?」

「……ここか」

すぱーんと開いた押し入れらしきラックを見て、絶望する。

「ドラえも○が十体位暴れても余裕がありそうだ……」

「意味分かんねーよ」

「あうっ」

避けれる程に馴れたデコピンを敢えてくらって、デコを擦った。


一日振りだというのに、無性に懐かしい気がする。

何だ。くそう、ニヤニヤしてしまう。


「きもっ。アイツのことでも考えてんのかよ」

「あ、アイツ?」

「あれだよ。ユウヒ様とやらをよ」

「あ!ああ、そう。そうに決まってるじゃん!!」


言えない。

ケントとのかけあいが嬉しくってニヤついてしまったなんて言えない!!

照れ隠しに頭をかいて、肩をすくめた。


「じゃあ、俺は自分の部屋に戻るから自由にしてろ」

「ん。ああ」

そっぽを向いてから、軽く頷いた。

パタン。という音すらしない高機能の扉に感動した後、部屋中の観察を始めた。


ベッドにドレッサー、どれも綺麗なのだがどことなく使用感がある。

宮崎さんと、ケントのどちらかの趣味とは思えない。

なら、誰か使用した人がいるってことだよな。
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