オタクな私にリア充の兄が出来た件wwww
委員会終了後、待ってましたと逃げ出そうとした瞬間、誰かに腕を掴まれた。

嫌な予感がする、まさか……ねぇ?
と、振り返れば、腕を引いたのは鈴木くんだった。

良かった。てっきり、ケントかと思った。


「ど、何処か行く予定なんですか?」

「いや、帰る予定しかないですけど、なにか」

鈴木くんはばつの悪そうな表情をして俯いた。

一体どういう意味なのだろう。


「文化委員長が“先程寝ていた女子生徒に直接説明する”って言ってたからさ。星野さんの事かと思って……」


ぞわっと鳥肌が全身を駆け巡った。
先程の委員会で寝てた強者なんて私位しかいないじゃないか!逃げるしかない!

「あ、ちょ。鈴木くん、急激に用事を思い出したから帰らないといけないので……では!!」

心配そうな顔の鈴木くんを振り切って、走り出した。

学校で鬼に捕まる訳にはいかない。


私のオタクという皮をむしられて、三次元なんかに恋する私の秘密がバラされてしまうなんて、あってはいけないのだ。


*


「あ。お帰りー、ルル。酷い形相ね」

「はぁ……はぁ……ちょっと、……走ったからね」

引きこもり補正の呼吸器は少し走っただけで、まともな息の吸い方を忘れてしまった様だ。

お母さんは縫い物の手を止めると、死にかけの私にお茶を出してくれた。

「はい。お母さん特製の凄いお茶」

「という名の麦茶でしょ?分かってるよ」

と言いつつも幼い頃から馴染みのある麦茶を飲むと、なんだかんだ治る気がするから不思議だ。


そう言えば、宮崎さんもお茶を出せとせがんでいたな。
今度言われたら、麦茶が冷蔵庫にあると伝えよう。わざわざ入れてやるのは、腹が立つ。


何気なく時計を見れば七時を過ぎていたーーヤバイ。


「あ、そうだ。ルル、言い忘れてたけど……」

「後で聞く!」


毎週木曜日、夜七時のアニメを生で見るのが私の習慣だ。逃せはしない。

自室に戻り、急いでテレビを付けると丁度オープニングが終わったところだった。

オープニングを逃したのは悔しいが、まだ序盤だからと自分を慰める。

「はー、ピカずう可愛いなー。一億万ボルト、私もくらいたい……」

今週も変わらず可愛い、主人公のペットのピカずうに歓声をあげる。


「……お前。まだ子供向けアニメを真面目に見てるのかよ」


人をバカにした様な嘲笑に、上から目線。

間違いなく宮崎さんだという事は分かっているが、“ぽっきもん”から目を離せないので、「だから?」と返す。


「何が面白い」

「そうやってバカに出来るのは今の内だ。必ず涙なしには、このアニメは見れないから」

「知らねーよ。まず、アニメに興味ないし」


オタクの神経を逆撫でする発言に舌打ちをする。

くそう。……私が見逃せないアニメを見ているからって調子に乗りやがって。



「って。何で、宮崎さんは私の部屋にいるんだ」


「は?聞いてねーの?これから一ヶ月、俺はお前の部屋に住むんだってよ」


聞いてないわ!!

思わずアニメから目を離してしまう程の衝撃だった。
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