禁断のプロポーズ
「さあ。
 そうとも限らないが、想定しておく必要はあると思うな」

 夏目が手を伸ばし、日記を取る。

 それを見ながら、
「おねえちゃんは誰の秘書だったんです?」
と問うと、

「もう辞めたじいさんのだ」
と言う。

「それに、秘書であることと、愛人であることに、つながりはない」

「えっ」

「別の役員の愛人かもしれない。

 だから、第二の女には、たいした仕事を任さないだろう?」

 飾りだからだよ、と夏目は言った。

「飾りの女に情報抜かれちゃたまらないからな」

「……嫌ですね、男って」

「俺が言ったんじゃないだろう」
と夏目は渋面を作る。

「貴方だって、近いうちに役員になりますよ。

 そしたら、平気でそんなこと言いだしたり、愛人作ったり……

 あの、やっぱり、結婚やめてもいいですか?」

「妄想を発展させるな」
と十年日記で頭をはたかれた。

「それ、痛いんですけど……」
と未咲は頭を抑える。
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