禁断のプロポーズ
「第一、俺が役員になることなどない」

「なぜです?」

「後を継ぐのは、おそらく、広瀬智久だ。

 広瀬が社長になれば、俺は飛ばされる。

 覇権争いをした人間が社内に居れば、邪魔だからな」

「そうですかねえ。
 貴方は使える人材ですから、私なら飛ばしません。

 広瀬専務もそんなにバカじゃないと思いますが。

 貴方に野心がないのは、知ってると思いますし」

「俺に野心があるかどうかなんて関係ない。

 戦国時代と一緒だよ。

 その血筋を名目にバカ殿を担ぎ出して、クーデターを起こし、自分が上に立とうという奴が現れる」

 そういうのが厄介なんだ、と夏目は言った。

 そんな夏目の顔を眺め、未咲は呟く。

「……おねえちゃんが此処に来たのは、友達だからですかね?」

 うん? と夏目がこちらを見る。

「もしかしたら、貴方が会長の隠し子だからだったり……?」

「あの時点で、知ってたかな」

 まだ発表になってはいなかった、と夏目は言う。
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