禁断のプロポーズ
 



「おはようございますーっ」

 いつものように秘書課に行くと、灰原たちは挨拶を返してくれたが、何故か桜から返事がなかった。

 ちらとこちらを見たが、視線をそらしてしまう。

 まるで最初の頃のような感じだ。

 専務室で、専務が居らず、佐々木も居ないときに訊いてみた。

「どうしたんですか? 桜さん。

 初めて会った頃みたいに高飛車ですが」

「あんたね」
といつものように振り向きかけて、桜はやめた。

「言いたいことがあるのなら言ってください。
 気持ち悪いから」

「ストレートね。
 あんた、そういうところ、専務と似てるわ」

 桜はひとつ溜息をついて言う。

「あんた、昨日専務と此処で抱き合ってなかった?

 確か、帰るって言ったあとで」

「一度帰りましたよ。

 戻ってきて、一万円あげようとしたら、桜さん、拒否されたじゃないですか。

 今日、高いランチ食べに行きましょうよ。

 奢りますから」

「それはいいんだけど。

 説明してくれる?」

 真正面からそう言われ、わかりました、と言った。
< 253 / 433 >

この作品をシェア

pagetop