禁断のプロポーズ
「おはようございますーっ」
いつものように秘書課に行くと、灰原たちは挨拶を返してくれたが、何故か桜から返事がなかった。
ちらとこちらを見たが、視線をそらしてしまう。
まるで最初の頃のような感じだ。
専務室で、専務が居らず、佐々木も居ないときに訊いてみた。
「どうしたんですか? 桜さん。
初めて会った頃みたいに高飛車ですが」
「あんたね」
といつものように振り向きかけて、桜はやめた。
「言いたいことがあるのなら言ってください。
気持ち悪いから」
「ストレートね。
あんた、そういうところ、専務と似てるわ」
桜はひとつ溜息をついて言う。
「あんた、昨日専務と此処で抱き合ってなかった?
確か、帰るって言ったあとで」
「一度帰りましたよ。
戻ってきて、一万円あげようとしたら、桜さん、拒否されたじゃないですか。
今日、高いランチ食べに行きましょうよ。
奢りますから」
「それはいいんだけど。
説明してくれる?」
真正面からそう言われ、わかりました、と言った。