禁断のプロポーズ
「智久さんは怒るかもしれませんが――」

「智久さん?」

「いちいち引っかからないくださいよ、もう~っ。

 今、私以上にナーバスな人間なんて居ないくらいなんですから。

 私は、二千万で専務に飼われてるスパイなんです」

「それ、ほんと?」
「微妙に嘘です」

「あんたね」
と言われ、

「いや、単に説明がめんどくさいのと、桜さんのような方がせっかく専務を想ってくれているのに、嫌いになられちゃ困るんで。

 どうかあの人の性格を矯正してください」
と迷惑なお願いをする。

 よく考えたら、ろくでもない。

 自分と夏目が兄妹だと知って、黙っているなんて。

 かと言って、それで夏目を苦しめようと企むほど、性悪が悪いわけでもない。

 所詮、おぼっちゃまだからな、と未咲は思った。

「ほんと、お願いですよ。
 桜さん、あの人、なんとかしてください〜っ」
と両肩に手を置き、すがりつく。

「なに言ってんのよ、もう〜っ。

 わかったわよ。

 って、なんだかわかんないけど、あんたと専務が親しくて、そういう関係じゃないのなら。

 私に協力しなさいよ」
と言ってくる。

 もちろんです〜、と桜を拝んだ。
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