禁断のプロポーズ
「お前……どっちだ」

 未咲のかくまった殺し屋か?

 未咲を狙ってる男か?

「俺のことは聞いてるんだろう。

 昔、未咲にかくまわれてた者だ」

 聞いてはいたが、外国人だとは思わなかった。

「めちゃめちゃ目立つじゃないか……」

 殺し屋なのに、と思っていると、男は、

「だからいいんだよ。

 かえって胡散臭くならなくて」
と言う。

「未咲には教えてないが、普段は、地方都市の英会話教室で働いている」

「そうか。
 わかったぞ」
ともらすと、なにがだ、と言われた。

 未咲の姉が、克己と浮気したわけがわかった。

 あの女、付き合った順番的には、智久、この男、克己だったんだな、と気がついた。

 殺し屋は、克己と少し似ていた。

 克己はこの男の身代わりだったのだ。

「もう心配いらない」
と男は少し軽そうな外見に反して、落ち着いた声で言ってくる。

「未咲を狙った奴は始末しておいた。

 お前らの前に姿を現わすつもりはなかったが、それだけは伝えておこうと思ってな」

「何故、未咲に直接それを言わない」

 男は黙っていた。

 未咲にこれ以上近づいて、また、彼女の身に危険が及ぶようになったらと心配しているのだろう。
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