禁断のプロポーズ
 そんな男の態度を見ていて、不安が確信に変わる。

「お前に訊きたいことがある。

 お前、なんで、未咲の姉貴と付き合った?」

 男は答えない。

「今回みたいな事態になるのを恐れて、お前は、未咲から離れたんじゃないのか?

 お前は敵が多いだろう。

 誰かが未咲のことを嗅ぎつけたんだ。

 だからーー」

 男は立ち上がる。

「俺は人としての感情が欠落している。

 表向きは、陽気に振舞っててもな。

 未咲に会うまではそう思ってた。

 正体がバレて刺されて、未咲に助けられた。

 だから、最初から未咲には、殺し屋だとバレていた。

 わざと陽気に感情豊かに振舞わなくていいから、彼女と居るのはとても楽だった。

 それだけだと思っていたのに。

 まさか、俺が本気になるなんて。

 そんなことがバレたら、未咲の身が危険になるだけなのに」

「……だから、未咲から離れたんだな。

 なのに、またお前は未咲と出会ってしまった」

 男は俯いて少し笑う。
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