空っぽのイヤホン(仮)
「…と、いうわけなのです。」

「まじか。」

五十嵐のことを沙代に話すと
ポッキーを咥えたまま、目を丸くしていた。

「あんた、好きな人とかできるんだ。」

「別にこれが初めてじゃないよ。
幼稚園のとき好きな人いたし。」

「じゃあ初めてみたいなものじゃん。」

ついでにあのフルーツ牛乳あんたの仕業だったんだ、と言われて
えへ、と愛想笑いを零す。

確かに、私が沙代にこういう類の話をするのは初めてだった。

逆はよくあるのだけれど。

沙代は今、家庭教師の先生と付き合っているらしい。


「でもみっこって結構積極的なんだね。」

「へ?そう?」

「だって屋上からプール飛び込むとか
なかなかできないでしょ。」

あのときはなんだか、行ける気がしてた。
確かに今考えると死んでた可能性もあるわけで。

知らず知らずのうちに大胆なことをしてたのかもしれない。
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