空っぽのイヤホン(仮)
昼休みは、私の1番好きな時間だ。

一緒にお昼食べよー、と誘ってくれる友達に謝って
いつもの場所まで早歩き。

“立ち入り禁止”とは名ばかりの
鍵も何もつけられていない屋上の扉。

なんの躊躇もなくそれを抜ける。


…やっぱり、いた。


なんとなく、いる気がしたの。

フェンスに背をもたれかけて
気持ちよさそうに空を見上げる彼が、

なんだか昨日と違って見えた。

「五十嵐。」

ゆっくり、私に視線を移した五十嵐は
少し微笑んでひらひらと手を振ってくる。

「ダメなんだー。
今日からここ、立ち入り禁止なんだよ。」

「知ってる、私のせいだから。」

フルーツ牛乳ポイ捨てしたんだ、と笑う五十嵐の目は
もう私じゃなくて青空に向けられている。

「みて、飛行機雲。明日は雨かな。」

「なんで?」

「飛行機雲がすぐ消えたら晴れ。
ずっと残ってたら雨になるって…知らない?」

「うん、知らない。」

見上げた空は青かった。

まっすぐに、消えずに残る、白。
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