空っぽのイヤホン(仮)
失礼します、と保健室を出て振り返ると

「あ、五十嵐。」

片手を上げる五十嵐の姿があった。

「どうしたの?」

「さっき教室行ったら倒れたって言うから来ちゃったんだけど。
なんか入りづらくて。」

「そっか。」

五十嵐は笑っていた。

昨日のことは、どう思っているんだろう。

「ねえ、屋上いこうよ。」

立ち入り禁止なんて、五十嵐には関係ないみたいだった。

「いいよ。あ、ちょっと待って。
Yシャツ持ってくる。」

先行ってるね、と反対方向に歩いていく五十嵐の背中を黙って眺めた。


『俺今、すっごいさみしー。』


昨日の五十嵐は、何だったの?
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