空っぽのイヤホン(仮)
ギイ、と音を立てて開く扉。

昨日と同じフェンスにもたれかかっていた五十嵐が
ぱ、と私に目をやった。

「びびった。先生かと思った。」

あはは、と笑いながら隣に立って
Yシャツの入った紙袋を渡す。

黙ってそれを受け取った五十嵐が
少し俯いてから私を見た。

「昨日、ごめん。
俺ちょっとおかしかったでしょ。」

「ううん。」

「恥ずかしいから、忘れて。」

「わかった。」


嘘、ほんとは、何もわかってなんかない。
忘れる気もない。

何もわからないから、教えてほしかったのに

そんなの願うほど私と五十嵐は親しくない。
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