空っぽのイヤホン(仮)
ふと、スカートのポケットに突っ込んだ手が固いものに触れた。

取り出すと小さなミュージックプレイヤー。

ああ、入れっぱなしだったんだ。
1人のときは、よく聴いていたのに。

五十嵐がそれを見て手を出してくる。

受け取ったイヤホンを耳に入れ、当たり前のようにもう片方を私に。

拒否しても意識してるみたいで悔しいから
私は無言でそれを耳に入れた。

ランダムで再生される音。

カチカチとスキップを連打していた五十嵐が、ピタリとその手を止めたのは

私の1番好きな歌だった。

アコースティックギターの音色で始まる、夏の歌。
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