空っぽのイヤホン(仮)
「…聴いたことない、けど」

俺、この歌好きだなー。

少し伏せられたまつ毛が綺麗だと思った。

「私もこの歌好き。」

「へえ、歌ってよ。」

「やだよ。」

「いいじゃん、ほら、せーのっ!」

「歌わないから!何そのテンション。」

五十嵐が笑ったとき、ちょうど歌が終わった。

「短い歌ー。」

「うんでも、そこがまた、いいでしょ。」

不思議そうに五十嵐が私の顔を見る。

そうだね、と言った五十嵐の声は
なんだか切なかった。

リピートする歌。
ひと夏の恋、なんて言っちゃってる歌。

私と五十嵐の、お気に入り。
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