空っぽのイヤホン(仮)

For an instant.


音楽の授業。

暑くて暑くてしょうがない。

聴いたことのあるようなないようなクラシックが耳を通る。

クラスの半分くらい寝てるし…。

私は頬杖をつき、窓からグラウンドを眺めていた。

どこかのクラスが体育をやっている。

パン、というピストルの音で走り出す1人の男子。

速い、すごく。

彼の長い脚は飛ぶように地面を蹴って
私は一瞬で釘付けになった。

グラウンドの端まで行くと
スピードが緩く落とされていく。

Tシャツで顔の汗を拭っているその姿がやけにかっこよく見えて。


暑くて暑くてしょうがないのに、

私は一瞬で彼を好きになった。
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