空っぽのイヤホン(仮)

Wet day.

色々と忙しかった昨日が終わって
夜を越えると雨が降っていた。

ビニールに空色をつけたような傘をさして、学校までを歩く。

途中で自転車が水溜りを跳ねて、私に雫が飛んだけど、別にどうでもよかった。

玄関で靴を履き替えようとして、動きを止める。

私の靴箱の前に、どこか見覚えのある女の子が立っていたからだ。

私が首を傾げていると、彼女はスッと真っ直ぐに私を見上げた。

「…白井美紀子?」

「え、はい…そうですけど…。」

どうして名前を?と聞けないくらいの冷たいオーラを放つ彼女。

背の低いその子は何かを探るように私を見つめてくる。

……ん?背の低い?

「あっ!」

突然声を上げた私に
彼女はビクッと肩を揺らした後、眉間にシワを寄せて訝しげな目を向けてきた。

思い出した、この子。
Yシャツ返そうとしたとき、五十嵐と一緒にいた子だ。

「何ですか。」

「あ、いや…。
…私の靴箱そこだから、ちょっといいかな?」

彼女はわりとあっさりそこをよけてくれた。
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