空っぽのイヤホン(仮)
連れて来られたのは音楽室で、当然誰もいない。

中心当たりまで進んだ聖奈さんが
私に背を向けたまま口を開いた。

「朝言ったことなんですけど。」

「う、うん。」

「気は変わりましたか。」

淡々とした口調。

私なんかよりずっと大人っぽい。

「今日はまだ五十嵐に会えてなくて…。」

「……そうですか。」

ずっと変わらなかった聖奈さんの雰囲気が
少し落胆帯びた気がした。

「聖奈さんは…」

「後輩なんですから、呼び捨てでいいですけど。」

「あ、じゃあ聖奈ちゃんは…
五十嵐と、仲がいいのかな?」

我ながらズルい。

五十嵐には勇気がなくて聞けないから
こうして他の人から探っていくなんて。
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