空っぽのイヤホン(仮)
「ていうか受け止めてくれなかったよね。」

「びっくりしてそれどころじゃなかったんですー。」

「お詫びに名前教えてよ。」

「え?それお詫びなの?」

いいからはやく、と促すと

五十嵐心(いがらしこころ)、と薄い唇が
はっきりとした声で発した。

「君は?」

「白井美紀子(しらいみきこ)。
みっこでいいよ、みんなそう呼ぶの。」

脚をパタパタと動かすと
パシャ、と音を立てて滴が散った。

偶然それが五十嵐の顔に飛ぶ。

うわ、と言って腕でそれを拭っていた。

「…わざと?」

「わざとじゃない。」

「ならいいや。」

五十嵐は、私に仕返ししようと手に汲んだ水をそのままプールに返した。
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