藍くん私に触れないで‼


藍くんの病気のことは、大体、理解した。

だけど、どうしても1つだけ分からない。
大切な最後の三ヶ月だったはずだ。

それを、どうして、私と過ごすんだろう。


私は、彼にちゃんと、それ相応の何かをしてあげれたのだろうか。

まだだ。なにも、してやれてない。




「なんで、その三ヶ月、私と過ごしてくれたんでしょうか」


「そうしたかったからだろ」


「再会したとき、藍くんは、酷かったです。私のことなんて、そんな価値あると思ってなかったはずです」


「それは、あんたの勘違いだろ。あいつはずっと、母親の看病で縛られてきた。
だから中学の時、あいつに友達らしいやつはいなかったし。誰にも寄り付かなかった。
けど、いつからか夜遊びなんかいっちょまえにし始めて、もう、それからはひどいもんだよ。

だからあいつは母親の死に際に立ち会えなかった。それを後悔してんのかは知らない。

高校に入って、あんたと会うまで色んな女部屋に連れ込んでるの見たよ。

俺があいつと出会ってからあいつが本当に、笑った顔なんて見たことなかった。
だから、俺はよく知らないけど。

最後に過ごす人を選ぶとするなら、あんたしか思い浮かばなかったんだろうな。
あいつにとって、今までで一番幸せだったときは、あんたと過ごしたほんの短い幼少時代だったんだと、俺は思ってる」




最後まで聞く前に、私は涙を押さえられなくなっていた。

月島さんの言ってることが、本当なら、
私がそれを知っていたなら、もっと、彼に優しくした。

もっと、彼を大切にして、甘やかしてあげた。


私だって、今までで一番幸せだったときは、

彼と過ごしたあの短い幼い頃だった。



彼も、そう思ってくれていたなら、こんな嬉しいことはない。


私のことを、忘れていなかった。


ちゃんと、覚えてくれていた。



だったら、私はこれからどうすればいい。

私の人生は、彼だ。



彼が居ない人生に、私は生きていられない。


助けないと。



藍くんを幸せにする。


それが、私のするべきこと。



どんな無謀なことでも、やってみせる。

だってそれは、私にしか出来ないことなんだから。




「藍くんは、死なせません」


「俺もそりゃそうしてやりたいけど、現実的にそれは…」


「やります。私の全てをかけて、彼を救います。」


「だから、それは無理」


「無理じゃないです。やらなきゃダメなんです。じゃないと、私は、これからどう生きたらいいのかわかりません」


「…そんなの、どうすんの。あんただって分かってるだろ。あいつを助けるにはどうしたって莫大な金がいる。

あんた、そんな金ないだろ」


「だから、私の全てをかけるって、言ったんです」


「は?」


「とにかく、藍くんと話します」


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