藍くん私に触れないで‼


私は立ち上がり、玄関に向かった。



「あ、おい。鍵ないんじゃない」


ひょいと、投げ渡された鍵。私はしっかりキャッチしてお辞儀した。

月島さんの家を出て、隣の部屋まで数歩歩き部屋のの前に立つ。

大丈夫だ。

何も怖がることはない。


私はもう決意をした。


あとは行動に移すだけ。


鍵は、きちんとかかっていた。


ドアノブに鍵を差し込み、捻った。
ガチャッと音を立てたのを聞き、ドアノブに手をかけ、躊躇いなくドアを開いた。


静まり返った部屋。


まるで誰もいないみたいだ。



あ、そういえば、今学校だ。

藍くんは、学校に行ってる可能性あるんだった。忘れてた。


けど、待って。

暗がりのなか玄関をよく見ると、藍くんの学校へ行く時にはく靴がそのままある。

靴を履かずにどこかに行くわけでもないだろう。


私は中へ足を踏み入れた。


藍くんの部屋をのぞく。

けれど、そこには誰もいなかった。


寝ていると思ったのに、違うのか。


藍くんの部屋から視線を外したとき、どこからか物音がした。
そのあと、激しい咳き込みの声を聞いて、私の鼓動がはねあがった。



「藍くん!!」


洗面所の方からだ。

すぐに私は藍くんのもとに向かった。


藍くんは、膝を床につけて洗面台に手をかけてる状態だった。
洗面台に水が流れ続けている。その水は血液を流していた。

藍くんは振り返らないで蚊が泣くような声で来るなと言った。

もちろん私はそんな言葉に従っていられない。




「藍くん、」


次の瞬間藍くんが膝のバランスを崩して倒れた。


私はすぐ携帯を見つけてきて救急車を呼んだ。月島さんにも連絡した。


程なくして月島さんが部屋に来た。

心臓がばくばくと鳴ったけれど、自分に落ち着けと言い聞かせる。


それだけで、精一杯で、


私は手馴れた月島さんの行動を見ているしかなかった。




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