藍くん私に触れないで‼
予想外の質問に、私は顔をあげた。私は、少し考えてから、返した。
「藍くんは、弱い人だから、私に何でも隠そうとしてきた。病気のことも、全部。
一ヶ月後、彼は病院に入る予定だったみたい。私が藍くんの家に居座るのもあと一ヶ月のはずだった。
藍くんは最後の三ヶ月を私と過ごすことを選んでくれたよ。私、腹立つこともあったけど、すごく楽しかった。
今まで自分のために生きてきた。藍くんのために、ご飯作ったり掃除したり、藍くんは私のご飯いつも全部食べてくれるの。それが、すごく嬉しかったよ」
「そっか。桐は、藍くんにたくさん良いものを貰ったんだね」
「うん。だから、助けたい」
お父さんは頷いたあと、笑った。
「いいよー」
「え?」
「大切な娘のわがままだからね。いいよ。」
「ほんと!!?」
「お父さん、ほんとにいいの?億よ?億。それを他人に?」
お母さんが厳しい目でお父さんを睨んだ。
お母さんは昔から、厳しい人だった。だから、お父さんより簡単に認めてくれないだろう。
「はは。いいんじゃない?それに他人にじゃなくて、娘に、だよ。けどね、桐。医者ってもんはそんな簡単にはいかないよ。そんな決意で医者を目指しちゃいけない。
医者は、借金を返すための仕事じゃない。人を助けるための仕事だよ。」
「うん。あのね、私、藍くんみたいに病気で苦しむ人を助けたいって思うよ。
誰かのために、尽くしてみたいって最近思うようになったの。私を必要としてくれる人を助けたいって」
「そっか。でも、桐は自由だから。縛られないで、自分のしたいように生きなさい。それだけ、約束だよ」
「うん」
生まれて始めて、お父さんを尊敬した。
私が何をしても、お父さんはいつも温かく見守っていてくれた。
ありがとう。
私は、お父さんみたいな医者になりたいです。