藍くん私に触れないで‼


再会した彼女は、俺が過去に望んでいたことを、今までずっと守ってくれていた。

俺を待ってくれていた。

だけど、それはもう、無理なことだと自分が一番理解していたから、彼女のことをなかったことにしようと思った。

そして、過去の俺もなかったことにしようと思った。


再会したあと、彼女が携帯を落としていった。


そのとき、それを無視していれば良かったんだ。


なのに、何を考えたのか、俺はそれを拾ってしまった。



全て、無かったことにしたいのに、
繋がりが消えるのを恐れている自分がいた。

だから、自分の残りの時間を、少しわがままになってみることにした。


三ヶ月だけ、彼女のものになることにした。


三ヶ月終わったら、学校を止めて病院に入る。

桐ちゃんには、何も言わずに、ばれずに、消える。
そう決めていた。


なのに、桐ちゃんと過ごす時間が、あまりに楽しくて、幸せで、

どんどん彼女を好きになっていく自分を、俺は否定しなかった。

でも、ある程度の距離を忘れたら、元も子ない。

なのに、桐ちゃんに触れることが好きで、

笑う顔が好きで、



桐ちゃんが何を考えてるのかは、あまり分からなかった。

この三ヶ月は、彼女の要望でもあったけれど、彼女を無理に縛ることはしたくなかった。

だから、突き放してしまうようなことも言った。



それでも、側に居てくれた。


ときが過ぎるにつれて、距離が縮まっていくような気がして、怖くなった。

桐ちゃんは、俺がいなくなるのを知らない。


だから、近すぎるのは困る。


でも、嫌われるのは嫌だ。

自分を好きでいてほしい。


言ってしまおうか。


彼女なら俺がいなくなったあと、ずっと、俺のことを考えてくれる。

忘れないでいてくれる。

俺のことだけ好きでいてくれる。


桐ちゃんを縛りたくないと思っていたのに、
たまに真逆のことを考えるようになった。

でも、最後には言わないでおくことにした。


ただ、言うのが、怖すぎた。


桐ちゃんがどんな反応するかなんて、分からない。



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