藍くん私に触れないで‼
__一蓮托生__
好きの定義があるのなら、
こんなに思い悩むことはなかっただろう。
水は百度で蒸発するとか、πr二乗が円の面積だとか、それはこういうことだと説明されて理解できるものなら、どれだけよかったか。
いや、わかったはずだった。
私が藍くんに抱いていた好きの気持ちの意味は、彼の姿形が美しくて綺麗で、
それはとても簡単なものだったはずだ。
しかし、
藍くんが言った言葉。
それに、どれだけの意味があるのかなんて、分かりようがなかった。
『嫌いじゃない、大好き』
まず初めに、なんの理由もなく、今まで藍くんが自分に抱いていたであろう私を嫌っているという気持ちを否定され、
その真逆の気持ちを出してきた。
大好き、だ。
好き、よりも、もっと上のレベルをいく、『大好き』だぞ。
藍くんが、私を、大好き?
は?
何がどうしてその言葉が出てきた?
だって、私が藍くんの中身をちっとも好きになっていないように、藍くんが私を好きになる理由だってない。
だとしたら、私と同じに、私の姿形を好きになったというの?
完全には否定しないけれど、
さすがにそこまで自惚れてはいない。
私は藍くんほど恐ろしく綺麗じゃない。
私が藍くんを好きになっても、逆はない。
私の性格の異常さなら私が一番理解している。
わざわざ私を好きになる理由がない。
ない、ない、ない。
だから、なにが、どうして、そうなったのか、
何もわからない。
だけど、聞き間違いではない。
今でも、その言葉の響きがいつでも耳の奥で私を急かすように呼び掛けてくるのだから。
大好き
大好き
大好き
まずい。このままでは、夕飯のメニューすら考えられなくなる。
はっきりさせないと、理由を聞かないと、
私は、私を保ってはいられない。
化学の難問を目の前にしてる気分
プラス、よく分からない胸の高鳴り。