藍くん私に触れないで‼
「菫!ご飯食べよー」
「あ、うん!」
お昼になるまでに、いろんな話をして、好きな音楽とかの趣味もあって、すっかり仲良くなれた。
ほんとうに席隣がこの子でよかった。
しかも私と同じでクラスに同じ中学の子いないみたいで、私と同じ人。
でも、とても社交性があるから、きっと私以外の人とも仲良くなれるんだろうなぁ
「あ、百合ちゃん、私パン買うんだった」
「そなの?付いてく?」
「ううん、平気!すぐに戻るね」
高校に入って楽しみにしていたこと。
新しい校舎に、
新しい制服に、
そして、学食でお昼を買う!
この学校は学生食堂があって、パンも販売してる。そのパンは全部手作りで、すっごくおいしいって有名なんだって。
だから、どうしても食べたくって私は食堂に走った。
「わ、わあ」
食堂に入るとそこは人人人。
お昼だから当たり前だけど、思ったよりずっとたくさんの人が居て戸惑った。
パンのコーナーにも人だかりが…
けど、ここまで来て買えないなんて、絶対いや。
初日お昼なしなんて、絶対いやだ!!
私は勇気を出してそのパンコーナーに突入していった。
『おばちゃーん、チョコベーグル2個』
『おばちゃん!!これとこれ』
しばらくすると、やっと先頭に来たので残ったパンを見ると、なんと狙ってたカレーパンは最後の一個だった。私は念願のカレーパンに必死に手を伸ばした。
そのとき、誰かと手が重なった。
その人の手が下で、私が、上だった。
「あっ、ごめんなさい!わ、わたし、これでいいや!!」
私は慌てて違うパンに手を伸ばした。
あんまり適当に取ったから全然見てなかった。
そして、おばちゃんに140円渡して人だかりを抜けて一息ついて、手に取ったパンを見た。
「……あんパンかぁ…あんこ苦手なんだよな…」
「ねえ、そこの君」
背中から声がして私は慌てて振り返った。
そして、私は、目を疑った。
そこに居たのは、見たことないくらい、顔が整ったかっこいい人が立っていたから。
背が高くて、綺麗な目だった。
はっ、私ってば、みとれてしまった。
「なな、なんですか!」
「カレーパン、欲しかったんだろ。譲るけど、」
あ、この人、さっきのパンコーナーで手が重なった人だ。
急いでいて全然顔見ていなかったけれど、こんなにかっこいい人だったんだ。
胸の名前プレートの色を見ると上級生みたい。
名前は、白木…藍?
綺麗な名前…
「あ、い、いいですよ、先に取った人のものですから」
「けど、あんこ苦手って」
「な、なんで知って、」
「さっき呟いてたじゃん」
あ、そっか!!そうだった、は、恥ずかしい…
「で、でも、あの、先輩だってカレーパン欲しくて取ったんだから、奪うなんて…」
「俺適当に取ったのがこれだったから、あといつもここに来て買わないし、何の執着もないんだけど」
「え、そ、そうなんですか…?」
「そうなんですよ」
「じゃ、じゃあ交換…?してもらえますか…?」
「最初から言ってるのに」
そうして私は、その先輩とパンの交換をして念願のカレーパンを手にした。