藍くん私に触れないで‼



とはいえ、何からしたらいいのかまったく分からない。
あのパンコーナーで話した以来話していないし、だいたい、話せる機会なんてないし…


部活にも入ってないみたいだし、
委員会にも入っていない。


どうしよう…


…桐先輩は、結局、何が言いたかったのかな。

悪い人ってわけではないと思うんだけど…
藍先輩をあんな風に言うのも、きっと色々なことがあったんだろうな…


私だって、藍先輩のこと、まだ知らないことも多いけれど、
優しい人ってことは分かるもん。


私は、藍先輩の優しさに惚れたんだもん。



とにかく、なんとか機会がないと…


……そうだ!!



私は、昼休み前に、購買に走った。


昼休みじゃないと、やっぱり結構すいていて、パンの種類は多くないけど、簡単に買うことができた。

これを口実にすれば、話せる…



140円のカレーパンを持って、教室に戻り、昼休みになってから私は藍先輩の教室に行こうと立ち上がった。



「あ、菫ー、ご飯一緒に」

「ごめん!今日用があるの!」

「おっけー」



藍先輩は昼休みになるとすぐどこかに行ってしまう。その前になんとか会いに行かないと。


二年生の教室の前に来ると、ちょうど藍先輩が教室から出てきた。

一人だ。

今しかない…


「あ、ああ、あの!!藍先輩!」


勇気を振り絞って私は声をあげた。



「……はい」

「あの、えっと、これ、どうぞ!!」

「…………いらないけど」



がーーーーん


で、ですよねー

いきなり来ていきなりカレーパン渡されたら何のこっちゃですよね!!



「藍先輩が前に私に譲ってくれたので、お礼です!」

「譲った?……俺が?何の話?」

「あ……すいません、覚えてないですよね、けど、お礼なので、受け取ってほしいんです」

「じゃあもらっときます」

「!!…あ、ありがとうございます!!」



私は頭を下げて、すぐに立ち去った。

よかった、よかった、受け取ってもらえた…!

少しだけど、話せた。



はあ、天に登っていきそうな気分…

…私のこと、やっぱり、忘れてたな…
そりゃ、そうだよね。

1ヶ月も前のことなんて、覚えてないよね。

でも、なんか、一歩踏み出せた気がする。


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