藍くん私に触れないで‼
結局、なんだったんだ。あれは。
まず断言できるのは彼は藍くんではない。
藍くんの顔をした別人だ。
そうに違いない。
藍くんはあんな喋り方しない、あんな低俗なことしない、あんな顔しない。
まあ、顔は綺麗だったが、
あれは天使の仮面を被った……チンピラ……
ゲス男、色情魔、汚物…
そういった部類だわ。
藍くんの顔であんなこと、本当に許せない。
よくも藍くんを汚してくれたわね。
私は、どうして勘違いなんてしたのかしら。
よく考えたら、
彼の髪は明るい茶色に染められていたし、耳にはピアスが開いていた。
その時点で気づくべきだった。
彼がそんなことするわけないものね。
藍くんには黒髪が一番似合うに決まっているし、それに自分の体に穴を開けるだなんて、そんなことしないものね。
ごめんなさい藍くん。
勘違いなんてして。
私も、教室へ帰る人が減ってきた頃に新しい教室へと向かった。
新しいクラスそして担任。
特に興味はない。
少しでも期待してしまった私がとても虚しい。
よくもまああそこまであんな男で盛り上がれたものだ。
思い出しただけで嫌になるわ。
教室に入ると、もう、ほとんどの生徒が中にいるようで、とても騒がしかった。
私はそっと存在を消して中に入り、席を確認したあと、自分の席へ向かった。
席につき、辺りを見回す。
私は、出席番号がラストなので、席は一番左の端。
窓際だった。
なので、このクラス全体が見える。
窓の外を見ながら騒ぐ女の子達や、1人席に座ってる子もいるし、固まってる男の子たちもいる。
「藍ー、お前課題やってんのー?」
「別に、やってねー」
ゲラゲラと笑い声のうるさい男集団。
そのなかの中心に、なにやら見覚えのある人物が。
ぎょっと、目を開いた。
嘘だと思いたい。
まさか、まさか同じクラスだなんて。
毎日、愛くんに似たあいつの顔を見なければならないなんて、最悪だ。
藍くんに似た顔で、下品な会話をする彼を見るなんて…耐えられない。
視界をシャットアウトしたいのに…
私は、どうしても、藍くんから目をそらすことはできない。
だって
本当に、綺麗だから…
目の前にまばゆいほど綺麗なものがあるのに無視し続けられるほど私は、強くできていないのだ。