愛に結ばれた蝶







「僕はもう
大事な人を失いたくないんです―――」




耳を掠める結の声は

震えて

涙声だった




「確かに蝶子さんは
多くの人を殺めたかもしれません

ですけど
どんな人でもやり直すことは
いくらでも出来るのです

罪も傷も
いつかは消えて
いつかは癒えるんです

消えない罪や
癒えない傷や
明けない夜や
止まない雨は

どこにもないんです―――」




世の中には言霊というものが

存在するらしい

言葉には魂が宿ると



結の言葉は

確かに魂が宿っていると思った



結の言葉は

誰が言うよりもあったかくて

優しかった





「結…結……

結ッ…!」





あたしは何度も結の名前を呼び

子どものように泣きじゃくった

嗚咽を漏らしながら

ただひたすら



結に抱かれて泣いた









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