愛に結ばれた蝶
「……んだよユイ」
杏璃に対して生意気な口を取っていた兄さんだけど
実は唯一苦手なものがあることを僕は知っている
それが僕の顔だ
「杏璃を興奮させないで
今は落ち着いているんだから
また発作が起きると大変だから」
そして兄さんが手を置いている蝶子さんの腕を引き
自分の方へと引き寄せた
「おいユイ!
なに人の彼女に手出しているんだよ!」
「蝶子さんのこと裏切ったくせに
人の彼女とか言わないでくれる?」
チッと兄さんは舌打ちをした
そして乱暴に持っていた細長い箱を
床に投げつけた
「来るんじゃなかった!」
ここが病院だと知っているのかと疑いたくなるほど
兄さんは大声で怒鳴ると
病室を出て行った
「…すみません変な所お見せして」
「……ううん大丈夫」
「ちょっと僕何か買ってきます
蝶子さん欲しいものありますか?」
「……おにぎり」
「わかりました
ちょっと売店行って買ってきますね」