愛に結ばれた蝶







痛々しいその傷から

あたしは目を逸らした





「蝶子さん?
食べないんですか?

僕が食べちゃいますよ?」


「食べるに決まっているでしょ」




あたしはナイフとフォークを持って

ハンバーグを切り分けて行く

目線はハンバーグを見ているけど

思い出しているのは先ほどの左手首の傷




結は見られたことを知らないようで

箸を使ってライスを食べて行く




…リストカットよね…アレって

血なんて見慣れているはずなのに

何故か凄く痛々しく感じてしまった




四肢が切られた死体も

脳みそがぶちまけられた死体も

血まみれの死体も

どんな死体も見たことあると言うのに




今までどんな死体を見ても

痛々しいなんて思ったことなかった







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