愛に結ばれた蝶
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「良いわよ
あたしが出すから
黙って下がっていなさい」
「いやいや!
僕が出しますって!」
「あのー…お客様…?」
僕と蝶子さんは
レジの所で言い合いをしていた
テーブルから伝票を持って離れたのは僕
流れで僕が出すものだと思っていたら
蝶子さんが自分が出すと言い始めたのだ
しかしそれでは駄目だ
普通ここで出すのが男の役目
だから断ったんだけど
蝶子さんが思ったよりも頑固で
僕らはレジの前で言い合うことになってしまったのだ
お昼時だから待っているお客さんも
レジでお会計をしている店員さんも
遠巻きに僕らを見ている
「蝶子さん
ここは黙って下がってください
男である僕が出すのが普通でしょう?」
「それ
一種の男女差別よ!」
「差別じゃないですって!
レディーファーストの一環です!」
「メンズファーストだってあっても
可笑しくないでしょ!
アンタこそ黙って下がりなさいよ!」
「無茶苦茶ですよ蝶子さん!」