愛に結ばれた蝶
蝶子さんが何か言っているけど
何も聞こえなかった
聞こえるのは
あの子の声だけ
僕を呼ぶあの子の声だけ
浮かぶのもあの子の顔だけ
大きな瞳から涙をこぼして
涙を浮かべた目で笑って
無邪気な笑顔が思い浮かぶ
あの子を殺しちゃ駄目だ
あの子が死ぬぐらいなら
あの笑顔が見られなくなるぐらいなら
僕は何度でも誰にでも
我が魂を譲り渡そう――――
「蝶子さん早くっ!
早くしないとあの子が死ぬ―――」
「あの子って誰よ!
結アンタ何言っているのさっきから」
結
その言葉に一気に冷静になった
まるで頭から
冷水を浴びた気分だった