大切な君に向けたたった1つの宝物
アタシは少し駆け足で教室に戻り、荷物を持って屋上へ向かった。
「はぁっはぁっ....」
呼吸を整えながら柵に体を少し乗せて下にあるグラウンドを見た。
あっ....いた!!
アタシはグラウンドでボールを追いかけて走る彼を見つけた。
香久山 悠(カグヤマ ハルカ)サッカー部。
アタシの大好きな人。
これはアタシのいつもの日課。
部活が終わったら教室に戻り、荷物を持って屋上へ行き彼を見る。
「....今日も..頑張ってるなー」
アタシは頬を緩めながら呟く。
香久山君を初めて見たのは去年のすごく寒い日だった。
アタシは自分の部屋に居て、ふと窓の外の雪を眺めていた。
すると、外から
「ヘックシ...」
っと言う声が聞こえて少し窓を開けて見てみた。
その人はネットに入ったサッカーボールを蹴りながら走っていたらしく、石に少しつまずいてよろけているところだった。
「あっ....」
アタシのその声に気がついたその人は、何も言わずニッっと笑ってまたどこかへ行ってしまった。
サッカーボールを蹴りながら走ってるなんて小学生みたいだなって思ったけど、その日一日中あのニッっとした笑顔が忘れられなくそれからアタシの片思いは始まった。
そして少したって、その人は同じ高校で同じ学年の香久山悠ってことを知った。