冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
(1)
ガラガラガラと、車輪の音が響く中、向かいの席に座っていた
侍女のエルダが、そっと声をかけてきた。
「リューリ様。」
そう言って、彼女の目は窓の外にむく。
言おうとすることがわかって、リューリは頷いた。
馬車の窓からは、小高い丘にそびえる堅牢な城壁をもった城と
その膝元に広がる街が見えた。
クルセルト城と、帝都セルトだ。
(とうとう来てしまった)
オニギス公国 第三王女 リューリイム=フォン=オニギス は、
和平条約に基づく婚姻のため
クルセルト国 皇帝 アシュレ=デュ=クルセルト
のもとに輿入れする。
戦争が始まったのは、五年前。
まだ、リューリが14歳の時だった。
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