冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
最後にそれまでの中で一番年をとり、りっぱなあご髭をたくわえた
老人がコツコツと杖をつきながら、前にすすみでた。
やはりこの老人も、令嬢をともなっていた。
その令嬢の姿をみとめた途端、リューリは顔がこわばるのを感じた。
「グロハイムでございます、陛下。
そしてこの者は、シルビア=ウインギュスターと申すもの。
行儀見習いのため、しばらく王宮に滞在させまする。
お目をかけていただければ幸いですな。」
老人のとなりから、艶やかな真紅のドレスに身を包んだシルビアが
すすみでて、優雅なしぐさで礼をする。
アシュレはここまできて、今日このゲストの訪問と夜会がなんの為に
開かれたかを悟った。
広い会場をみわたし、宰相のウイズルを探す。
ウイズルは得意満面な笑みをうかべこちらを見ている。
アシュレはそれとはわからぬように舌打ちをした。
(あの狸おやじめ、図ったな。)
「陛下、シルビア嬢とダンスをされては、いかがですかな。」
グロハイムの嗄れ声が聞こえた。
アシュレは気が進まなかったが、ことわって、今ここで事をあらだてる
わけにはいかない。