冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 とんとんと扉をノックする音がして、リューリは、”はい”と
 返事をすると、部屋の扉をあけた。

 ダニエルがたっていると思ったのに、立っていたのは
 イーノックだった。



   「イーノック!久しぶりですね。」

   「妃殿下、部屋の中へおじゃましてもいいですか?」

   「ええ、どうぞ。」



 イーノックにソファに座るようにいい、リューリは暖炉の
 火であたためているお湯をつかってお茶をいれた。



   「お茶まで自分でいれられているのですか?」

   「ここは、いつも女官達が控えている東の宮とは
    違いますからね。
    でも、心配しないで、私でも上手にお茶をいれられる
    のですよ。」



 リューリがいれたお茶を一口のみ、イーノックは ”おいしいです”
 といって微笑んだ。



 リューリはここにいて幸せそうだ。

 自分がこれから言うことは、やはり間違っているのだろうか。

 イーノックは逡巡した。
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