冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~

 そう言って、リューリは顔から手を離した。

 涙は流れていなかった。
 
 そのかわり、諦めきったような、感情の抜け落ちてしまったような
 顔で、リューリは天井をみている。



 その顔をしばらく見ていたアシュレは、ソファから身をおこし
 立ち上がると、リューリを一瞥し、吐き捨てるように言った。



   「そんなにいやがるならやめといてやる。
    べつに世継ぎはお前との子でなければならないと
    いうわけではないからな。」

   「そのかわり、人目のあるところでは仲のよい振りをするんだ
    俺を拒むことはゆるさない。」



 バタンと扉がしまるのを、リューリは天井に顔をむけたままで聞いた。




   「リューリ様!」



 すぐにエルダが駆け込んでくる。

 のろのろと体をおこすと、リューリは言った。



   「大丈夫よ、エルダ、 何もされなかったし。」



 夜会でやさしくされ、愛情がもてるのでは、、、、と期待した
 皇帝アシュレとの関係は最悪のものになった。

 おまけに国に帰ることもゆるされない。
 それどころか、命の危険すらあるのだ。


  (私は、、、)


 リューリは歯をくいしばった。


  (私はそれでも生きていかねばならない。
   
   私自身が和平の証なのだから、、、)
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