冷酷皇帝と偽りの花嫁~政略からはじまる恋の行方~
(12)
ダニエルのアジトでの一件があってから、
一週間がたっていた。
リューリは自室で、アシュレの見舞いをうけている。
あの後、リューリは三日ほど熱を出し、その後も自室に
引っ込んでいた。
信じていた人物に裏切られ、襲われたことは、リューリの
心に傷を残し、リューリの気持ちを落ち込ませている。
「まだ、具合はよくないのか。」
「いいえ、だいじょうぶでございます。」
口ではそういっているが、リューリの顔色は冴えない。
「取り調べの方はすすんでおりますか?」
「ああ、問題ない。」
裏取引に関係していたものは、すべて調べ上げられ、順に
処罰が下されているが、ダニエルは病死とされ、罪は明らかに
されなかった。
父親のウインギュスター卿が手をまわしたからだ。
アシュレはその事を表向きは黙認したが、ウインギュスター卿を
裏から押さえ込み、西方での卿の勢力を削ぐことに成功した。
運河の交易権とともに、長い間、アシュレの頭を悩ましていた
クルセルト国の西方の問題が片付いたことになる。